1. 労働委員会事務局トップ
  2. 命令等概要
  3. 令和6年交付分
  4. 明泉学園(継続雇用拒否)事件(令和2年不第85号事件)命令書交付について
  5. 【別紙】明泉学園(継続雇用拒否)事件(令和2年不第85号事件)命令書交付について

【別紙】明泉学園(継続雇用拒否)事件(令和2年不第85号事件)命令書交付について

1 当事者の概要

⑴ 申立人東京私立学校教職員組合連合(以下「私教連」という。)は、都内における私立学校の教職員組合の連合体であり、本件申立時における加盟組合数は約100組合、加盟組合員は約2,500名であった。

⑵ 申立人フェリシア高等学校教職員組合(以下「組合」といい、私教連と併せて「組合ら」という。)は、平成5年4月にX1、X2及びX3ら本件高校の教員を中心に結成され、私教連に組織加盟する労働組合であり、本件申立時の組合員数は10名であった。

⑶ 被申立人学校法人明泉学園(以下「法人」という。)は、肩書地に法人本部を置き、本件高校のほか短期大学や幼稚園等を運営する学校法人である。

2 事件の概要

法人の平成31年度就業規則では、職員は満60歳の誕生日をもって定年退職となり、継続雇用を希望する職員については、法人の定める基準に該当しない限り満65歳の誕生日まで継続雇用となる旨が定められていた。

令和元年7月17日、法人が運営する本件高校の教員であり、私教連に組織加盟している組合の組合員であるX1、X2及びX3は、X1が2年6月15日に、X2が9月22日に、X3が1024日にそれぞれ満60歳の誕生日を迎えることから、それぞれ、法人に対して「継続雇用希望申出書」を提出した。

法人は、5月8日付けでX1に対して、8月20日付けでX2に対して、9月18日付けでX3に対して、それぞれ継続雇用の申出を拒否する旨の回答書を送付した。

3 主文の要旨 <全部救済>

⑴ 法人は、X1を令和2年6月16日付けで、X2を同年9月23日付けで、X3を同年1025日付けで、それぞれ継続雇用した上、それ以降毎年4月1日付けで雇用契約を更新したものとして取り扱い、上記3名を職場復帰させるとともに、継続雇用の日から職場復帰するまでの間の賃金相当額として、それぞれ月額17万円以上の額を支払わなければならない。

⑵ 文書交付及び掲示

⑶ 前各項の履行報告

4 判断の要旨

⑴ 法人が、X1を令和2年6月16日以降継続雇用しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか

ア 各懲戒処分等の継続雇用拒否の理由としての相当性

法人がX1に対する継続雇用拒否の理由として挙げているのは19件の事由についてされた合計222件の懲戒処分等であるところ、法人のX1に対する各懲戒処分等については、いずれも継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くものであるとみざるを得ない。

イ 不当労働行為該当性

平成18年4月以降令和4年9月までの間、本件高校において定年退職し継続雇用の申出を行った教員のうち、継続雇用が認められなかったのは組合員のみである。

法人において継続雇用が認められた教員はいずれも定年退職時に役職に就いており、この点においていずれも定年退職時に役職に就いていなかったX1、X2及びX3ら組合員との間に明確な差異が認められるものの、法人の平成31年度就業規則には、継続雇用を希望する職員については、法人の定める基準に該当しない限り満65歳の誕生日まで継続雇用となる旨定められているところ、法人において定年退職時に何らかの役職に就いていないことが継続雇用されない条件となっていたとは認められない。

以上のことに加え、法人のX1に対する各懲戒処分等は、おおむね同人の組合活動に対するものであって、いずれも継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くものであることや、本件高校の生徒数が減少傾向にあるものの、X1が継続雇用となった場合の雇用形態である常勤講師について、2年度に7名が退職し、3年度に9名が採用されているという2年度及び3年度の法人における教員の退職及び採用状況に照らし、X1の継続雇用が可能な状況であったにもかかわらず、法人が、組合活動に対する上記各懲戒処分等を理由に同人の継続雇用の申出を拒否したこと、法人が、就業規則において組合員による組合活動に対する嫌悪感を容易に想起させる禁止事項を追加していること等の事情を併せて考慮すると、法人が、X1を2年6月16日以降継続雇用しなかったことは、同人が組合らの組合員であることを理由として行われた不利益取扱いであり、また、同人を法人から排除することによって組合らの組織及び活動を弱体化させる支配介入であるといえる。

⑵ 法人が、X2を令和2年9月23日以降継続雇用しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか

ア 各懲戒処分等の継続雇用拒否の理由としての相当性

法人がX2に対する継続雇用拒否の理由として挙げているのは12件の懲戒処分等であるところ、法人のX2に対する各懲戒処分等のうち、1件の訓告の懲戒処分以外については、継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くものであるとみざるを得ない。

イ 不当労働行為該当性

平成18年4月以降令和4年9月までの間、本件高校において定年退職し継続雇用の申出を行った教員のうち、継続雇用が認められなかったのは組合員のみであること、法人において定年退職時に何らかの役職に就いていないことが継続雇用されない条件となっていたと認めることはできないこと、法人のX2に対する各懲戒処分等は、その多くが同人の組合活動に対するものであって、1件を除き、いずれも継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くものであることや、2年度及び3年度の法人における教員の退職及び採用状況から、X1と同様にX2の継続雇用が可能な状況であったにもかかわらず、法人が、組合活動に対する上記各懲戒処分等を理由に同人の継続雇用の申出を拒否したこと、法人が、就業規則において組合員の組合活動に対する嫌悪感を容易に想起させる禁止事項等を追加していることを併せて考慮すると、法人が、X2を2年9月23日以降継続雇用しなかったことは、同人が組合らの組合員であることを理由として行われた不利益取扱いであり、また、同人を法人から排除することによって組合らの組織及び活動を弱体化させる支配介入であるといえる。

⑶ 法人が、X3を令和2年1025日以降継続雇用しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか

ア 各懲戒処分等の継続雇用拒否の理由としての相当性

法人がX3に対する継続雇用拒否の理由として挙げているのは20件の事由についてされた合計312件の懲戒処分等であるところ、法人のX3に対する懲戒処分等のうち、1件の訓告の懲戒処分以外については、継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くものであるとみざるを得ない。

イ 不当労働行為該当性

平成18年4月以降令和4年9月までの間、本件高校において定年退職し継続雇用の申出を行った教員のうち、継続雇用が認められなかったのは組合員のみであること、法人において定年退職時に何らかの役職に就いていないことが継続雇用されない条件となっていたと認めることはできないこと、法人のX3に対する各懲戒処分等は、その多くが同人の組合活動に対するものであって、1件を除き、いずれも継続雇用の申出を拒否する理由として相当性を欠くものであることや、2年度及び3年度の法人における教員の採用及び退職状況から、X1と同様にX3の継続雇用が可能な状況であったにもかかわらず、法人が、組合活動に対する上記各懲戒処分等を理由に同人の継続雇用の申出を拒否したこと、法人が、就業規則において組合員の組合活動に対する嫌悪感を容易に想起させる禁止事項等を追加していることを併せて考慮すると、法人が、X3を令和2年1025日以降継続雇用しなかったことは、同人が組合らの組合員であることを理由として行われた不利益取扱いであり、また、同人を法人から排除することによって組合らの組織及び活動を弱体化させる支配介入であるといえる。

5 命令書交付の経過

⑴ 申立年月日      令和2年9月4日

⑵ 公益委員会議の合議 令和6年6月18

⑶ 命令書交付日    令和6年9月5日

記事ID:044-001-20241227-010075