【別紙】BLUE ROSE事件(令和3年不第81号事件)命令書交付について

1 当事者の概要

⑴ 申立人キャバ&アルバイトユニオンOWLs(以下「組合」という。)は、接待飲食業等で働く労働者の権利を守る目的で結成された個人加盟のいわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員数は9名である。組合の共同代表の権限については、規約第12条において、「⑴ 共同代表 組合を代表し、業務を統括します。」と定められている。

⑵ 被申立人株式会社BLUE ROSE(以下「会社」という。)は、肩書地において接待飲食店「CLUB LEGEND」(以下「店舗」という。)を経営しており、本件申立時の店舗の従業員数は約10名である。代表取締役はY1が務め、店舗の店長はY2が務めている。

 

2 事件の概要

申立人組合の組合員Xは、令和2年11月6日から3年4月30日までの間、被申立人会社が経営する店舗で勤務した。

6月13日、組合は会社に対してXの未払賃金及び遅延損害金(以下「未払賃金等」という。)の支払並びに解雇の撤回を議題とする団体交渉を申し入れ、7月12日及び9月13日、組合と会社とは団体交渉を開催した。

9月21日の第3回団体交渉の当日、会社は、組合に対し、組合が提出した音声記録の一部が再生できないことを理由に団体交渉の中止を連絡した。

1012日、会社が組合において支払を要求する未払賃金等のうち150,600円について支払義務を認めたことから、11月1日、組合は未払賃金等の総額について異議を留保した上で、会社において異議のない上記の金員を受領する意思を表したが、同月2日、会社は組合が未払賃金等の総額について異議を留保していることを理由に上記金員の支払を拒否した。

1124日、組合は、当委員会に対し、本件不当労働行為救済申立てを行った。

5年5月21日、組合は会社に対して団体交渉の再開を申し入れたが、会社がこれに応答しなかったため、6月5日、組合は店舗に赴き、団体交渉の再開を申し入れた。しかし、会社は団体交渉に応じなかった。

本件は、以下⑴から⑷までがそれぞれ争われた事案である。

⑴ 会社が、Xに対し、支払義務があることを認めた未払賃金等を支払わなかったことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか(争点1)。

⑵ 3年7月12日及び9月13日に行われた団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるか(争点2)。

⑶ 会社が、9月21日の団体交渉を中止したこと及び1012日付けの「回答書⑵」でこれ以上団体交渉をする必要がない旨を回答したことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか(争点3)。

⑷ 組合の5年5月21日付け及び6月5日付けの団体交渉再開の申入れに対し、会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか(争点4)。

 

3 主文の要旨 <一部救済>

⑴ 会社は、組合員Xに対し、金員150,600円を支払わなければならない。

⑵ 会社は、組合が令和5年5月21日付け及び6月5日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。

⑶ 会社による文書交付(要旨:支払義務があることを認めた未払賃金を支払わなかったこと、令和3年9月21日の団体交渉を中止したこと及び1012日付けの「回答書⑵」でこれ以上団体交渉をする必要がない旨を回答したこと並びに団体交渉再開の申入れに対して当社が応じなかったことが不当労働行為と認定されたこと。今後繰り返さないよう留意すること。)

⑷ 会社による上記⑴及び⑶の履行報告

⑸ その余の申立ての棄却

 

4 判断の要旨

⑴ 会社が、Xに対し、支払義務があることを認めた未払賃金等を支払わなかったことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか(争点1)について

会社は、会社の他の従業員を組合に勧誘するなどのXの組合活動を嫌悪し、組合との交渉を回避しながら、会社が支払義務があることを認めた部分を超える未払賃金等に係る組合の要求を取り下げさせることを意図して、組合員であるXに対し、支払義務があることを会社が認めた部分についても支払わないとする不利益を課したとみるのが相当である。

したがって、会社が、Xに対し、支払義務があることを認めた未払賃金等を支払わなかったことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たる。

⑵ 7月12日及び9月13日に行われた団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるか(争点2)について

会社は、有期雇用契約を合意した日付については確認すると述べ、賃金から控除された費用に関する質問には相応の回答を行い、給与の支払日に関する質問に対しても店則を提示して説明し、賃金から厚生費と称する費用を控除していた対応についても過ちを認めて返金を約束しているほか、労使双方が次回の団体交渉に向けて相互に課題を出し合うなど今後の交渉の進展が望める状況であったことも踏まえると、第1回及び第2回団体交渉における会社の対応が不誠実であるとはいえない。

したがって、7月12日及び9月13日に行われた団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たらない。

⑶ 会社が、9月21日の団体交渉を中止したこと及び1012日付けの「回答書⑵」でこれ以上団体交渉をする必要がない旨を回答したことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか(争点3)について

①未払賃金等に関する協議事項については、上記⑵(争点2)のとおり、第2回団体交渉において、次回の団体交渉に向けて、会社は、Xの賃金受取りのサインを得たことを証する資料を提出すると述べ、組合も、団体交渉の録音データを提出すると述べ、労使双方が相互に課題を出し合い、今後の交渉の進展を望める状況であった。加えて、会社が未払賃金等の額として150,600円を提示したのは1012日付けの「回答書⑵」であり、会社がこの金額を提示して以降、団体交渉は行われていないのであるから、団体交渉を行う必要があったというべきであり、団体交渉の打切りに正当な理由があるということはできない。

②有期雇用か無期雇用かという協議事項についても、第2回団体交渉において、⒜組合が有期雇用契約を合意した日付を問うたところ、会社は2年12月9日であると述べ、その後、組合からその日はXが出勤していないと指摘されたことを受けて、「いろいろ調べてちゃんと確定しておきますから。」などと回答したにとどまること、⒝組合が、3年4月5日にXがY2店長から4月までは雇用とするが5月からは個人事業主として扱うと言われたことが解雇に当たるという認識を前提に解雇撤回を求めたのに対し、会社は、Xが個人事業主に戻っても頑張っていきますという旨をLINEで述べていたから、組合が言う解雇になるとしてもそれを受け入れていたなどと回答したにとどまるから、労使双方が主張を出し尽くしたと評価することはできない。

以上の事情からすると、1012日付けの「回答書⑵」の時点で、労使双方が主張を出し尽くし、これ以上団体交渉を行っても議論の進展が見込めない、行き詰まりの状態に至っていたものと評価することはできない。

したがって、会社が、9月21日の団体交渉を中止したこと及び1012日付けの「回答書⑵」でこれ以上団体交渉をする必要がない旨を回答したことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

⑷ 組合の5年5月21日付け及び6月5日付けの団体交渉再開の申入れに対し、会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか(争点4)について

会社は、組合の5月21日付け及び6月5日付けの団体交渉再開の申入れに対し、回答を行わず、団体交渉は開催されなかった。

この点、会社は、7月20日の第10回調査期日以降、期日指定についての適式な連絡を受けながら期日に出頭せず、同月10日に組合が追加申立てを行ったこの争点について、主張書面や証拠を提出しておらず、会社が団体交渉に応じなかったことに正当な理由があったと認めるに足りる事実の疎明をしていない。このほか、正当な理由があったといえるような事情も特にうかがわれない。

したがって、組合の5月21日付け及び6月5日付けの団体交渉再開の申入れに対し、会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

 

5 命令書交付の経過

⑴ 申立年月日            令和3年1124

⑵ 公益委員会議の合議     令和6年10月1日

⑶ 命令書交付日           令和6年1111

記事ID:044-001-20241227-010083