令和3年9月29日 

東京都労働委員会事務局 

 

S事件命令書交付について

 

当委員会は、本日、標記の不当労働行為救済申立事件について、命令書を交付しましたのでお知らせします。命令書の概要は、以下のとおりです(詳細は別紙)。

 

1 当事者

申 立 人   X1(組合)

被申立人  Y1(会社)

 

2 争 点

⑴ 平成30年5月2日に中労委において組合及び会社が受諾した本件和解勧告書について、会社に不履行が認められるか、不履行が認められるとして、不利益取扱い及び支配介入に当たるか

⑵ 30年5月30日、7月11日、9月5日、1113日及び31年1月25日の団体交渉における会社の対応が不誠実な団体交渉及び支配介入に当たるか

⑶ 会社がX3の連絡先をマネージャー名簿に記載しなかったこと、法人設立30周年記念式典における会社のX3及びX4(以下「両名」という。)に対する取扱い等が不利益取扱い及び支配介入に当たるか

⑷ 30年7月16日に会社がA1に対して行った注意指導が不利益取扱い及び支配介入に当たるか

 

3 命令の概要 <一部救済>

    争点1

ア X3の職務について、本件和解勧告書に反するとまではいえない。

イ X3の特任マネージャー就任について、会社が正しく周知しなかったということはできない。

ウ X4の工場顧問就任を会社が店舗従業員に通知しなかったことは、直ちに本件和解協定書を履行していないとまでいうことはできない。

エ 会社がマネージャー会議からX3を外したこと及び店舗会議の開催実績が月1回より少ないことが直ちに本件和解勧告書に違反しているとはいえない。

オ 組合は工場長会議が工場会議と名称変更になったものと理解して会社と合意したなどと主張するが、会社が新たに工場会議を設置したとみるのが自然である。工場会議の開催実績は少ないが、本件和解勧告書の不履行とはいえない。

カ 両名が出張や人事評価シートに関する勉強会の対象にならず、X4が親睦会から除外されたことに本件和解勧告書の不履行があったとまではいうことはできない。

キ 以上のとおり、会社が本件和解勧告書を履行しなかったとは認められず、他に組合員であることを理由として両名を不利益に取り扱った事情も認められないから、会社の本件和解勧告書についての対応は組合員に対する不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入には当たらない。

⑵ 争点2

ア 第43回団体交渉(30年5月30日)において、会社は、組合の要求に対し何らかの形で伝えると答え、その後「回答書」により回答し、一定の資料を示して経営状態の概要を説明しており、組合は、それ以上の資料要求等を行っていないのであるから、会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるとまではいえず、組合に対する支配介入にも当たらない。

イ 第44回団体交渉(7月11日)において、会社は、X4の工場顧問就任の通知について、会社が業務上の必要に応じて行うもので、組合が指摘したり要求したりする事柄ではないとの態度に終始した。しかし、就任通知は、本件和解勧告書に明記された労使合意事項と解すべきであり、会社の業務上の必要だけではなく、両名の名誉回復を図り、新設の職に就く両名の業務が円滑に進むよう配慮する趣旨も含めて本件和解勧告書に記載されたものとみるのが相当であるから、会社は誠実に交渉に応じなければならないというべきであり、会社の対応は不誠実な団体交渉に当たるといわざるを得ないが、支配介入に当たるとまではいえない。

ウ 第45回団体交渉(9月5日)における、「やると言わなかったら懲戒する。」、「組合が言うことを聞かないからだ。」などの発言、A1に対する注意指導についての「住居侵入罪である」、「マネージャーの適性はない」などの発言を行った会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるとまではいえないし、組合に対する支配介入にも当たらない。

エ 第46回団体交渉(1113日)において、会社は、X3の要望に対して応じる旨回答しているといえ、X3がその後も繰り返し要望したことに対する会社の発言の内容は不誠実な団体交渉に当たるとまではいえないし、組合に対する支配介入にも当たらない。

オ 第48回団体交渉(31年1月25日)において、組織図に特任マネージャー及び工場顧問の記載がない理由についての会社の説明が誠実さを欠くとまではいえず、会社の対応が不誠実な団体交渉にも組合に対する支配介入に当たるとまではいえない。

    争点3

ア X3の連絡先をマネージャー名簿に記載しなかったことについて、X3が組合員であることを理由としたものであることの具体的な疎明はないから、X3に対する不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入に当たるとまではいえない。

イ 法人設立30周年記念式典について、会社が、意図的に両名に対して業務指示をしなかったことなどを認めるに足りる具体的な疎明はなく、他に会社が両名に対し組合員であることを理由として差別的に取り扱ったとの事情も認められないから、会社の対応が両名に対する不利益取扱い又は組合に対する支配介入に当たるとまではいえない。

    争点4

会社が勤務日以外に店舗を訪れてカーテンの設置を行ったA1に対して注意指導をしたことに理由がないとはいえないから、会社のA1に対する注意指導はX3に対する不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入に当たるとまではいえない。

<参考>

命令に不服がある場合、当事者は次のいずれかの手続をとることができる。

・中央労働委員会に再審査申立て(申立人及び被申立人15日以内)

・東京地方裁判所に取消訴訟を提起(被申立人30日以内、申立人6か月以内)

問合せ先

労働委員会事務局審査調整課

電話 0353206985