【別紙】

 

1 当事者の概要

⑴ 申立人X1(以下「組合」という。)は、平成22年4月25日に結成されたいわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員数は420名である。

⑵ 申立人X2(以下「支部」といい、組合と合わせて「組合ら」という。)は、22年4月に組合の支部となった。本件申立時の組合員数は13名である。組合員は、外国語指導助手などとして小中学校又は高等学校において勤務している。なお、支部の組合員は、全て被申立人Y1の執行機関の一つであるY2(以下「Y2」という。)に任用されているALTである。

⑶ 被申立人Y1は、肩書地に本庁舎を置く地方公共団体であり、その執行機関の一つとして、地方自治法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づき行政委員会である都教委を設置している。

 

2 事件の概要

Y2は、東京都立学校の外国人英語等教育補助員(以下「ALT」という。)を、令和2年3月以前は特別職地方公務員として任用していたが、同年4月1日の地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)の施行に伴い、同日から、一般職地方公務員である会計年度任用職員として任用した。

7月30日、組合らは、Y2に対し、ALTの契約更新など10項目を議題とする団体交渉を申し入れた(以下「本件団体交渉申入れ」という。)。

しかし、Y2は、ALTには労働組合法の適用がないとの理由で、団体交渉に応じなかった。

本件は、@組合らが、会計年度任用職員の労働条件等に係る本件団体交渉申入れについて、申立適格を有するか否か、A申立適格を有する場合、本件団体交渉申入れにY2が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが争われた事案である。

 

3 主文の要旨<却下>

 本件申立てを却下する。

 

4 判断の要旨

⑴ 組合らの申立適格について

ア 組合らの本件団体交渉申入れに対し、Y2は、会計年度任用職員には労働組合法が適用されないとして、これに応じなかった。なお、組合らが本件審査手続中に10項目の団体交渉議題のうちの一つについて取り下げたことから、本件審査の対象は、組合らによる9項目の議題に係る本件団体交渉申入れである。

イ 組合らが本件団体交渉申入れを行った2年7月30日時点においては、改正法により、Y2に任用されているALTは両名を含め全て一般職の地方公務員である会計年度任用職員として任用されており、地方公務員法が適用される一方で労働組合法は適用されない。

ウ また、本件団体交渉申入れの時点で既に改正法が施行されていたが、本件団体交渉申入れにおける9項目の議題につき、改正法施行前の具体的な事象に関するものであるとか、本件団体交渉申入れ前や改正法の施行前から組合らがY2に団体交渉を申し入れていたとの主張も疎明もない。
 そうすると、本件団体交渉申入れの9項目の議題は、いずれも労働組合法の適用除外である会計年度任用職員であるALTに係るものであり、本件団体交渉申入れは、労働組合法上の保護すなわち不当労働行為救済制度の対象とはなり得ないから、本件団体交渉申入れに対するY2の対応は不当労働行為に該当しないことが明らかである。

エ したがって、労働組合法が適用されない会計年度任用職員に係る事項を議題とした本件団体交渉申入れについて、組合らに不当労働行為救済の申立適格を認めることはできず、本件は、これを却下せざるを得ない。

オ なお、本件結審日までの時点で組合らが東京都人事委員会に職員団体として登録されていない以上、Y2は、本件団体交渉申入れに係る事項に関し、交渉の申入れに応ずべき地位に立つものでもないことも念のため付言しておく。

⑵ 本件団体交渉申入れにY2が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かについて

  上記のとおり、労働組合法が適用されない会計年度任用職員に係る事項を議題とした本件団体交渉申入れについて、組合らの申立適格は認められないのであるから判断を要しない。

 

5 命令書交付の経過

⑴ 申立年月日            令和2年1126

⑵ 公益委員会議の合議     令和4年7月19

⑶ 命令書交付日           令和4年9月26