【別紙】

 

1 当事者の概要

⑴ 被申立人会社は、昭和55年に設立され、産業廃棄物の収集、運搬、処理等を行う株式会社である。会社は、東京都羽村市に本社を置くほか、配車センター、複数のリサイクル工場を置き、本件申立時の従業員数は65名である。

⑵ 申立人組合は、業種を問わず東京都三多摩地区を中心とする企業に雇用される労働者で構成される、いわゆる合同労組である。本件申立時の組合員数は約200名であり、そのうち、会社で勤務する組合員が分会を結成した。

 

2 争点

本件は、組合と会社との間で、以下の点が不当労働行為に該当するか否かなどについて争われた事案である。

⑴ 組合の平成27年7月30日付文書、8月5日付文書及び8月24日付文書による団体交渉の申入れに対する会社の対応

⑵ 7月31日及び8月17日、会社が、A1分会長、A2及びA3(以下、併せて「A1分会長ら3名」という。)に対し、配車の指示を行わなかったこと

  ⑶ 8月1日、B1社長が、工場長及び配車係のB2ら従業員に対し、組合の結成により弁護士費用が必要なため、夏季賞与を支払わないなどと発言した事実の有無及びその不当労働行為性

⑷ 8月1日、B2が、会社運輸部の従業員に対し、組合を解散してもらいたいなどと発言した事実の有無及びその不当労働行為性

⑸ 8月3日、B2及び会社の従業員であるB3が、A1分会長ら3名に対し、夏季賞与が支払われないのは組合の責任であるなどと発言した事実の有無及びその不当労働行為性

⑹ 8月7日、B3が、A3のダンプカーに土砂を積み込む際、ダンプを押すことや揺するなどといった行為を行った事実の有無及びその不当労働行為性

⑺ 8月7日、B1社長が、A3に対し、組合を辞めるか会社を退職するかどちらかにしろなどと発言した事実の有無及びその不当労働行為性

⑻ 8月20日、会社が、組合員が運転する車両の鍵の返却を求めたこと、9月9日、A2及びA3に対し、車両の鍵の返却を求めて訴訟を提起したこと

⑼ 会社が27年度夏季賞与を例年の半額に相当する金額で支給したこと

⑽ 会社が、A1分会長ら3名による各ストライキを違法なストライキ又は無断欠勤として扱ったこと

⑾ 会社が、9月15日から同月17日までの期間、A1分会長ら3名を無断欠勤として扱ったこと

⑿ 9月19日、会社が、A1分会長ら3名に対し、草むしりを指示したこと

⒀ 9月19日、会社は、A1分会長ら3名に対し、午後の早退を指示した事実の有無及び無断早退として扱ったことの不当労働行為性

⒁ 10月2日から同月14日までの期間について、A3が年次有給休暇の取得を申請したのに対し、会社がこれを不承認としたこと

⒂ 会社が1014日付けでA1分会長ら3名を解雇したこと

⒃ 上記⒂が不当労働行為と認められる場合、救済方法としてバックペイを命ずるとき、A1分会長ら3名の中間収入を控除すべきか否か

 

3 主文の要旨

⑴ 会社は、A1分会長ら3名に対し、27年7月31日及び8月17日に業務に従事したものとして扱い、両日分の賃金相当額を支払わなければならない。

⑵ 会社は、組合員に対し、組合活動を批判し、中傷する発言をさせるなどして、組合の運営に支配介入してはならない。

⑶ 会社は、A1分会長ら3名に対し、27年度夏季賞与を26年度と同水準で支払わなければならない。

⑷ 会社は、A1分会長ら3名に対して行った解雇をなかったものとして取り扱い、原職に復帰させるとともに、その間の賃金相当額を支払わなければならない。

⑸ 文書掲示及び交付(不当労働行為であると認定されたこと。今後繰り返さないように留意すること。)

 ⑹ ⑴⑶⑷⑸の履行報告

 

4 判断の要旨

⑴ 組合の27年7月30日付文書、8月5日付文書及び8月24日付文書による団体交渉の申入れに対する会社の対応について

 @ 団体交渉開催の遅延について

会社は、申入れから8日後に時間がほしい旨回答し、組合が申請したあっせんに応じ、その手続の中で組合の希望どおり団体交渉に応じている。したがって、会社が団体交渉を拒否した事実は認められない。(棄却)

A 不誠実団体交渉について

ア 7月30日付文書による雇用契約の締結、残業代の支払等の要求について

限られた時間内に行われる団体交渉の中では、全ての事項について協議す ることは困難である。会社が他の事項の協議に固執して7月30日付文書の要求事項について協議を避けたという事情もみられない。(棄却)

イ 8月5日付文書による夏季賞与支払要求について

会社は、賞与について、社長の裁量、経営判断としか説明せず、9月に、前年度の半額程度で支給した理由を一切説明していない。したがって、会社は、誠実交渉義務を果たしたとは到底いうことができない。(救済)

ウ 8月24日付文書による車両の鍵返却問題に関する質問について

会社は、組合からの質問や要求に対して一定の見解を表明したというべきである。鍵の返却問題について組合がそれ以上の追及や要求等を行っていないことも考慮すれば、不誠実であったとまではいえない。(棄却)

⑵ 7月31日及び8月17日、会社が、A1分会長ら3名に対し、配車の指示を行わなかったことについて

 @ 7月30日の団体交渉申入れの際、B1社長は、組合に入ってから話し合うこと自体が間違いであり、順番が違う、いきなり来たから気分が悪いなどと繰り返し述べており、組合に対する嫌悪感を抱いていたといえる。加えて、上記申入れを受けて、B1社長がその状況を配車担当のB4専務に伝えていることも併せ考慮すると、会社が7月31日に配車の指示を行わなかったことは、前日の申入れを理由とした不利益取扱いに該当する。(救済)

A 7月30日付申入れ以降、組合は、8月5日及び7日、会社に対し、従業員の不当労働行為発言をやめさせることや、夏季賞与を例年どおり支給することを申し入れるなど活動が活発化してきたことが認められる。そして、B1社長が、8月7日にA3に対し、分会結成を非難する発言をして脱退勧奨していたこと(後記⑺)、同月17日に組合に対し、分会結成通知時から気分が悪い、何で怒らせることをするんだなどと怒鳴ったことを併せ考慮すると、会社が8月17日に配車の指示を行わなかったことは、上記組合活動への報復とみざるを得ず、不利益取扱いに該当する。(救済)

⑶ 8月1日、B1社長が、工場長及びB2ら従業員に対し、組合の結成により弁護士費用が必要なため、夏季賞与を支払わないなどと発言した事実の有無及びその不当労働行為性について

B1社長の陳述書及びB2の8月3日の発言(後記⑸@)等を総合すると、B1社長は、組合の結成により弁護士費用が必要なため、夏季賞与を支払わないなどと発言したことを認めることができる。

そして、B1社長の発言は、社内で広まることとなり、非組合員に対し、組合のために賞与がもらえないと印象付け、反組合的感情を醸成する発言であるといえる。したがって、組合の結成、運営に対する支配介入に該当する。(救済)

⑷ 8月1日、B2が、会社運輸部の従業員に対し、組合を解散してもらいたいなどと発言した事実の有無及びその不当労働行為性について

上記発言をB2が8月1日に行ったという事実を認めるに足りる組合からの疎明がないことから、B2が上記発言をしたということはできない。(棄却)

⑸ 8月3日、B2及びB3が、A1分会長ら3名に対し、夏季賞与が支払われないのは組合の責任であるなどと発言した事実の有無及びその不当労働行為性について

@ 8月3日の話合いの席上、B2は、組合とのやり取りのために弁護士費用が必要となり賞与が支払えないかもしれないという1日のB1社長の発言を聞いて、A1分会長らが勝手に発足させた組合対策のためにお金を回すことになるから組合に責任があるということだなどと発言した。また、B3は、賞与が出なかったら保障してほしい、給料が下がったら組合員らの責任になるなどと発言した。したがって、B2及びB3は、夏季賞与が支払われないのは、組合の責任であるという趣旨の発言をしたことが認められる。

A B2は、配車係として、組合員ら運転手の勤怠や業務を指示する監督的立場にあり、B4専務と行動を共にしていたことが認められ、使用者の利益を代表する者に近接する職制上の地位にあったということができる。そして、B2の上記発言は、会社の意を体してなされたものであると認めるのが相当である。

 B3は一般従業員ではあるものの、B2と一体となって上記発言を行っており、会社の行為であるとみるのが相当である。

 B そして、上記発言は、組合活動を非難してけん制するものであることから、組合の運営に対する支配介入に該当する。(救済)

⑹ 8月7日、B3が、A3のダンプに土砂を積み込む際、ダンプを押すことや揺するなどといった行為を行った事実の有無及びその不当労働行為性について

8月7日、工場敷地内で、B3は、A3が乗車中のダンプに揺れるほどの衝撃を与えたことが認められる。

しかし、B3の行為が会社の指示によるものであると認めるに足りる組合からの疎明がないことから、支配介入に該当するとはいえない。(棄却)

⑺ 8月7日、B1社長が、A3に対し、組合を辞めるか会社を退職するかどちらかにしろなどと発言した事実の有無及びその不当労働行為性について

8月7日、B1社長は、A3に対し、「お前ら、組合辞めんのか、続けていくのかどっちなんだよ。」などと発言したことが認められる。

この発言は、組合員と従業員の二者択一を迫って組合の脱退を勧奨するものであり、組合の結成、運営に対する支配介入であることは明らかである。(救済)

⑻ 8月20日、会社が、組合員が運転する車両の鍵の返却を求めたこと、9月9日、A2及びA3に対し、車両の鍵の返却を求めて訴訟を提起したことについて

A1分会長ら3名は、8月11日から9月18日までの間、有給休暇取得、ストライキの行使等により出社していない。車両の管理・所有権は会社にある以上、会社が、出社しない組合員らの使用する車両の鍵の返却を求めたことには正当な理由があるといわざるを得ず、不利益取扱いには該当しない。(棄却)

⑼ 会社が27年度夏季賞与を例年の半額に相当する金額で支給したことについて

B1社長は、8月1日に、組合の結成により弁護士費用が必要なため、夏季賞与を支払わないなどと発言し(前記⑶)、また、同月7日には、「ボーナス出すのも俺の腹一つだから、利益あって出すわけじゃないから。・・・俺はこういう人間だから頭にこさせたらマイナスになるからね。」と述べていた。そして、前記⑵のとおり、B1社長は、分会結成を嫌悪していた。したがって、会社は分会結成を理由に夏季賞与を半額程度で支給したとみざるを得ず、このことは不利益取扱い及び支配介入に当たる。(救済)

⑽ 会社が、A1分会長ら3名による各ストライキを違法なストライキ又は無断欠勤として扱ったことについて

組合は、一定の手順を踏んだ上で不当労働行為に抗議することを目的に争議行為をしており、争議行為の正当性があることは明らかである。したがって、ストライキに対する会社の取扱いは、正当な組合活動を理由とする不利益取扱い及びストライキの抑制を企図した支配介入に当たるということができる。(救済)

⑾ 会社が、9月15日から同月17日までの期間、A1分会長ら3名を無断欠勤として扱ったことについて

会社では、前日が休みの場合は運転手自ら会社に連絡を取って配車等を確認している。したがって、あらかじめ会社に連絡を取らずに出社しなかったA1分会長らに対し、会社が無断欠勤としたのはやむを得ない取扱いであり、不利益取扱い及び支配介入に当たるとはいえない。(棄却)

⑿ 9月19日、会社がA1分会長ら3名に対し、草むしりを指示したことについて

草むしり業務は、従業員に月数回割り当てられるものであり、組合員以外にも当日、草むしり業務を行っていた者がいた。したがって、会社がA1分会長らに草むしりを指示したことは、組合員に対する不利益取扱いには当たらない。(棄却)

⒀ 9月19日、会社は、A1分会長ら3名に対し、午後の早退を指示した事実の有無及び無断早退として扱ったことの不当労働行為性について

A1分会長らが草むしり業務をしていた際、熱中症になりそうだなどと発言したところ、B2は、嫌なら帰れよと応じた。このB2の発言をもって、会社として早退する旨を指示したと解するのは困難である。したがって、会社が、A1分会長らを無断早退として取り扱ったことが不利益取扱い及び支配介入に当たるとはいえない。(棄却)

⒁ 10月2日から同月14日までの期間について、A3が年次有給休暇の取得を申請したのに対し、会社がこれを不承認としたことについて

会社がA3の有給休暇を不承認としたこと自体は、会社の事務担当者が有給休暇の発生要件を満たしていないと誤解したために、会社が誤認したものとみるのが相当である。そして、A3の不利益については、その後組合と会社との間で交渉が行われるなどして解消され、B1社長も謝罪している。したがって、改めて不当労働行為に問うことは相当でない。(棄却)

⒂ 会社が271014日付けでA1分会長ら3名を解雇したことについて

@ 会社は、組合活動に正当性がなく、本件解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものであって有効であると主張する。

 しかし、7月30日の団体交渉申入れの状況を組合がビデオカメラで撮影した行為は、申入れ事実を記録することが目的であり、会社を挑発するものではなく、会社の業務を妨害する意図もなかったし、実際の業務に影響を及ぼした事情は見受けられない。また、組合が8月3日及び7日のやり取り(前記⑸⑺)を録音した行為は、不当労働行為から身を守ることが目的であり、業務上の秘密を漏えいさせるための行為ではない。したがって、これらの行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱するものとまではいえない。

 組合員らが使用する車両の鍵を返却しなかった(前記⑻)のは、担当車両を売却され、運転手としての仕事を失うことを危惧したからであり、それなりの理由があるといえる。また、組合員らのストライキ(前記⑽)は正当性を有する。さらに、組合員らと他の従業員との間の信頼関係が崩壊していたとしても、それはB1社長の組合に対する姿勢に起因するものである。

したがって、これらのことを解雇の理由とする会社の主張には合理性が認められない。

A B1社長の言動(前記⑵⑶⑺⑼)等からすると、会社が組合を嫌悪していたことは明らかである。したがって、本件解雇は、会社から組合を排除するために行ったとみるべきであり、組合員であること及び正当な組合活動を理由とする不利益取扱いであり、かつ、組合の運営に対する支配介入に該当する。(救済)

⒃ 上記⒂が不当労働行為と認められる場合、救済方法としてバックペイを命ずるとき、A1分会長ら3名の中間収入を控除すべきか否かについて

本件解雇後、A1分会長らは、総じて会社在籍当時と比べてはるかに劣悪な労働条件で就労しているなど、本件解雇による個人的被害が軽微とはいえない。他方で、結成当初は10名程度の分会員がいたものの、数々の不当労働行為を経て、本件解雇により、会社から組合が一掃されることとなり、組合に対して重大な打撃を与えるに至ったといえる。

したがって、本件解雇により侵害された個人的被害の救済、集団的労使関係秩序の回復、確保の観点を総合すると、中間収入を控除しないのが相当である。

 

5 命令交付の経過

⑴ 申立年月     平成27年8月24

⑵ 公益委員会議の合議  平成30年2月20

⑶ 命令書交付日     平成30年3月22