【別紙】

1 当事者の概要

⑴ 申立人X1は、東京都及び周辺地域の労働者を業種、雇用形態に関わりなく組織する労働組合である。

⑵ 申立人X2(以下、「組合」という。)は、本件申立時の組合員数は約60名であり、Y2又はY3(以下、Y2と併せて「子会社2社」という。)のいずれかに在籍している。

⑶ 被申立人Y1は、子会社2社の持株会社である。

⑷ 被申立人Y2は、工業用ゴム製品の製造及び販売等を業とする株式会社である。

⑸ 被申立人Y3は、ソフトテニスボール等の製造及び販売、スポーツ用品の仕入れ販売等を業とする株式会社である。

 

2 事件の概要

  平成27年8月18日、被申立人Y1は、取締役会において、同社並びに子会社である被申立人Y2及び同Y3(以下、2社を併せて「子会社2社」という。)の製造工場及び事務所用地であるY1所有地を、同日付けで申立外Z株式会社に売却すること(以下「本件土地売却」という。)を決定した。

本件土地売却公表以降、子会社2社の従業員を組織する申立人X2(以下「組合」という。)は、Y1及び子会社2社に対し、公表当日の8月18日以降4回にわたり、本件土地売却に伴う従業員の雇用問題等について団体交渉を申し入れた。しかし、Y1は、組合の申入れに対して何ら回答しなかった。また、子会社2社は、組合が掲げる議題は義務的団体交渉事項に当たらないとして、組合の申入れに応じなかった。

本件は、@Y1が労働組合法上の使用者に当たるか否か、AY1及び子会社2社が、組合が4回にわたり申し入れた団体交渉に応じなかったことが、正当な理由のない団体交渉拒否及び組合に対する支配介入に該当するか否かが争われた事案である。

 

3 主文

  本件申立てを棄却する。

 

4 判断の要旨

⑴ Y1の使用者性について

@ Y1及び子会社2社は、協働して業務を行っていたことがうかがわれ、加えて、Y1が子会社2社の経営に一定の影響力を及ぼしていることも推認される。

A しかし、Y1が子会社2社の従業員の賃金を実質的に決定していたとか、子会社2社の労働者の雇用及び賃金の決定に実質的に関与していたことをうかがわせる事実についての疎明はない。また、子会社2社が主体的に子会社2社の従業員である組合員の労働条件について組合との交渉に応じ、これを決定していたことなどからすると、Y1が子会社2社の従業員の労働条件について、雇用主と同視できるほどに支配力を及ぼしていると認めることはできない。

B また、Y1は、会社分割に当たり、Y2等の従業員に対し、組合との間で協定書を締結して賃金及び退職金の支払債務を保証しているが、Y1が固定資産を流動資産に変えたことによって、直ちに同社の債務保証に支障を来すとはいえず、また、その他、上記協定書の基礎を揺るがすような事態が具体的に示されているともいえない。そうすると、Y1が子会社2社の従業員の賃金及び退職金の支払債務を保証していることをもって、Y1が本件団体交渉に応ずべきであったということはできない。

⑵ Y1及び子会社2社の団体交渉拒否について

@ 上記⑴のとおり、Y1は、本件団体交渉申入れに応ずべき労働組合法上の使用者に該当しないから、同社が組合の申し入れた団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否には当たらない。

A 子会社2社は、組合が4回にわたり申し入れた団体交渉事項のうち、「春闘継続団交」以外の事項については義務的団体交渉事項に当たらないとして、いずれの団体交渉申入れにも応じなかった。

B 組合が8月18日付申入書で議題とする「柏工場土地約1万坪の譲渡にともなう雇用問題」について、子会社2社は、8月19日付従業員宛て書面において、現在の事業運営、工場の操業は今のまま継続すること及び従業員の処遇や身分について変わることがないことの2点を明記している一方、本件土地売却による組合員の労働条件への影響について何ら疎明はなく、実際に何らかの影響があった事実も特に認められない。したがって、この議題は、組合員の労働条件との関連が明らかであるとはいえず、義務的団体交渉事項とはいえない。

C 組合が8月27日付申入書、9月4日付申入書及び9月24日付書面により申し入れた団体交渉議題は、本件土地売却によって得られる資金の詳細及びその使途に関する内容であったり、定期借地権契約内容の開示及び定期借地権契約の期限到来後の経営方針に係る意思表明や本件土地売却により発生した利益の使途及び本件土地売却の周辺事情の説明を求める内容であったりするから、いずれも直ちに組合員の労働条件に関連する事項であるとはいえない。したがって、これらの議題は、義務的団体交渉事項とはいえない。

 

5 命令交付の経過

⑴ 申立年月日     平成2710月2日

⑵ 公益委員会議の合議  平成29年4月4日

⑶ 命令書交付日     平成29年5月11