⑴ 申立人組合は、平成24年8月28日、加盟者らによって結成された労働組合で、本件申立時の組合員数は13名である。
⑵ 被申立人会社は、食料品、衣料品、家庭用品、日用品雑貨等の販売等の物品小売業に関するフランチャイズ・システムによるコンサルタント事業等を営む株式会社で、B・フランチャイズ・チェーンのフランチャイザーとして、コンビニエンスストア「B」のフランチャイズ事業を展開している。
会社との間でフランチャイズ契約を締結する加盟者であり、B加盟店の店長を務めるAらは、平成24年8月28日、組合を結成した。組合は、9月4日付けで、会社に対して組合結成を通知するとともに、「加盟者が再契約を希望する際に会社が可否を決定する具体的な判断基準について」を議題とする団体交渉を申し入れた。
会社は、9月21日、Aに宛て、加盟者の希望に沿えない場合は、その加盟者に対し再契約を行わない理由を具体的に明示している旨を記載した文書を送付し、団体交渉応諾については明確な回答を行わなかった。
組合は、10月2日付団体交渉申入書により、改めて団体交渉に応じられるかについて、Aではなく組合に回答するよう会社に要求したが、会社は、再度、A宛の10月18日付文書により、加盟者個人との話合いの場を設けるなどとして、団体交渉に応ずるとの回答をしなかった。
本件は、@本件組合員である加盟者は、労働組合法上の労働者に当たるか否か、A労働組合法上の労働者に当たる場合、組合が24年9月4日付け及び10月2日付けで会社に申し入れた団体交渉について、会社が個々の加盟者と話合いを行うと回答し、団体交渉に応じていないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが争われた事案である。
⑴ 会社は、組合が平成24年9月4日付け及び10月2日付けで申し入れた、組合の組合員と会社とのフランチャイズ契約の再契約の可否を決定する具体的な判断基準についての団体交渉を拒否してはならず、速やかに、かつ、誠実に応じなければならない。
⑵ 会社は、下記内容の文書を組合に交付しなければならない。
「会社が、24年9月4日付け及び10月2日付けで組合の申し入れた団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。」
⑶ 会社は、前各項の履行報告をしなければならない。
⑴ 本件における加盟者は労働組合法上の労働者に当たるかについて
フランチャイズ契約であっても、その実態においてフランチャイジーがフランチャイザーに対して労務を提供していると評価できる場合もあり得るのであるから、フランチャイズ契約との形式であることのみをもって、労働組合法上の労働者に該当する余地がないとすることはできない。本件における加盟者の就労等の実態を鑑みると、加盟者は、会社に対して労務を提供していたといえる。そして、本件における加盟者が労働組合法上の労働者に当たるか否かは、@事業組織への組入れ、A契約内容の一方的・定型的決定、B報酬の労務対価性、C業務の依頼に応ずべき関係、D広い意味での指揮監督下の労務提供及び一定の時間的場所的拘束、E顕著な事業者性等の諸事情があるか否かを総合的に考慮して判断すべきである。
@会社が運営するB・システムは、加盟者の労務提供なしには機能せず、加盟者が、会社の業務遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に組み入れられており、A加盟者は、B店が全国的にどこでも同一のシステムと統一的なイメージで経営・運営されるべきであるという要請により、定型的な契約を余儀なくされており、B加盟者の得る金員は、労務提供に対する対価又はそれに類する収入としての性格を有するものといえ、C会社からの指示、指導や助言、推奨に従わない場合に再契約を拒否される不安等から、加盟者は、会社の個々の業務の依頼に応じざるを得ない状況にあり、D加盟者は、広い意味で、会社の指揮監督の下に労務を提供していると解することができ、その労務提供に当たっては、時間や場所について一定の拘束を受けているということができる。一方、E加盟者には、自らの独立した経営判断に基づいてその業務内容を差配して収益管理を行う機会が実態として確保されているとは認め難く、実態として顕著な事業者性を備えているとはいえない。
これらの諸事情を総合的に勘案すれば、本件における加盟者は、会社との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。
⑵ 会社が団体交渉に応じていないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるかについて
本件の団体交渉申入れ事項であるフランチャイズ契約の再契約の可否の基準は、労務供給者である組合員の生計の維持に直結する労務供給ないし就業機会の継続の可否にかかるもので、組合員の労働条件ないし経済的地位に関する事項であり、かつ、会社が使用者としての立場で実質的に決定又は支配できるものであるから、義務的団体交渉事項に当たると解するのが相当である。
したがって、組合の申し入れた団体交渉について、会社が、個々の加盟者との話合いの場を設けるとして、組合との団体交渉に応じていないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。
⑴ 申立年月日 平成24年12月5日
⑵ 公益委員会議の合議 平成27年3月3日及び17日
⑶ 命令交付日 平成27年4月16日