【別紙】

 

1 当事者の概要

   被申立人Y1(以下「会社」という。)は、東京都品川区広町に本社(以下「本社」という。)を、同区八潮に事業所(以下「八潮事業所」という。)を有する株式会社である。会社の本社では申立外Z1(以下「Z1」という。)所有の鉄道車両部品の修繕、清掃業務等を、八潮事業所では申立外Z2所有の車両及び建屋の清掃業務を主たる業としている。平成31年4月時点での全体の従業員数は約140名、八潮事業所は14名である。

   申立人X1(以下「組合」という。)は、28年6月、Z1、申立外Z3やその子会社等(会社を含む。)に勤務する労働者により結成された労働組合であり、八潮支部を有している。本件申立時の組合員数は17名、八潮支部は4名である。

 

2 事件の概要

31年1月23日、会社のY2総務部長及びY3企画部長が、組合の八潮事業所支部の書記長であるX2に対し、定年退職予定日である2月末日付けでの退職届を提出するよう求めたが、X2はこれを拒否した。

2月13日の団体交渉で、組合は、Z1からの出向社員(エルダー社員)ではなく、会社の定年退職者を引き続き嘱託社員として配置するよう求めたが、会社は、欠員分は出向社員で補充する旨回答した。

2月28日、X2は、定年により会社を退職した。

本件は、会社がX2を定年退職後に嘱託社員として継続雇用しなかったことは同人が組合員であることを理由とする不利益取扱い又は組合の組織・運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。

 

3 主文の要旨

  棄却

 

4 判断の要旨

⑴ 組合は、会社には定年退職者を嘱託社員として採用する慣行があったにもかかわらず、会社が欠員をエルダー社員で補充する方針に一方的に転換したと主張する。確かに、24年から29年にかけては八潮事業所に2名から4名の嘱託社員がいたが、この事実のみから同事業所において定年退職者を嘱託社員として採用するという慣行があったと認めることはできない。

⑵ 会社の就業規則によれば、会社は業務の都合により会社が必要と認めたときに定年退職者を嘱託として勤務させることができるとされている。八潮事業所の業務は清掃作業が主であり、同事業所での経験を積んだ者を定年退職後も雇用すべき業務上の必要性があったとはいい難い。

また、本社では多くの業務において専門的な資格が必要とされており、本社と八潮事業所では業務内容が異なることから、会社が定年退職者の雇用について、本社と八潮事業所とでその対応を異にしたとしても、それが不合理であるとまではいえない。

   組合は、会社がX2の勤務成績不良等を問題にするのは後付けの理由であり、組合員を職場から排除する不当労働行為意思により同人の雇用延長を拒否したと主張する。しかし、X2は、28年7月以降、遅刻や無断欠勤を繰り返し、厳重注意、訓告及び懲戒処分である戒告を受けているのであるから、会社が同人の勤務態度を問題視するのは無理からぬことである。そして、上記⑴のとおり、定年退職者を嘱託社員として採用するという慣行があったとはいえず、上記⑵のとおり、八潮事業所での経験を積んだ者を定年退職後も継続して雇用するという業務上の必要性があったともいえない以上、会社が遅刻や無断欠勤等による処分歴がある同人を嘱託社員として採用しなかったことには理由があったといわざるを得ない。

   以上のとおり、会社がX2を嘱託社員として採用しなかったことには理由があり、他に、会社が同人が組合員であることを嫌悪して同人を継続雇用しなかったと認めるに足りる疎明もないことから、会社がX2を定年退職後に嘱託社員として継続雇用しなかったことは、同人が組合員であることを理由とする不利益取扱い及び組合の組織・運営に対する支配介入には当たらない。

 

5 命令交付の経過

⑴ 申立年月日    平成31年3月25

⑵ 公益委員会議の合議 令和3年2月2日

⑶ 命令書交付日    令和3年3月18