【別紙】

 

1 当事者の概要

⑴ 被申立人会社は、肩書地に本社を置き、高圧受変電設備の保安管理業務、ESシステムの販売、電力コンサルティング、電気料金自動検針、電力小売等を業とする株式会社である。

⑵ 申立人組合は、業種を問わず、東京都三多摩地区を中心とする企業に雇用される労働者によって組織される、いわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員数は、約200名である。

   組合の下部組織として、会社と業務提携契約を締結した電気管理技術者(以下「協力会技術者」という。)らにより組織される分会がある。

   

2 事件の概要

  会社は、保安管理業務について、電気管理技術者(保安管理業務を行うことができる一定の要件を満たす個人事業者)と業務提携契約を締結しており、会社と同契約を締結した協力会技術者は、会社から高圧受変電設備を常時監視する装置(以下「ESシステム」という。)を導入した高圧受変電設備の設置者(以下「顧客」という。)を会社から紹介され、顧客と保安管理業務委託契約(以下「業務委託契約」という。)」を締結し、顧客が有する高圧受変電設備の保安管理業務を行っている。

平成30年1月頃、協力会技術者のうち、業務提携契約の内容に不満を持つ者が組合に加入し、分会を結成した。1月31日、組合は、会社に対し、分会の結成を通知するとともに、業務提携契約について、競業避止義務の撤廃並びに業務提携契約及び協力会の会員規則(以下「会則」という。)を変更する場合には組合と十分に協議し合意の上で行うこと等を議題とする団体交渉を申し入れた。

  3月16日、4月12日、5月23日及び6月19日、組合と会社との間で話合いが行われ、その間、6月8日、組合は、「業務提携契約締結に向けた要求書」(以下「6月8日付要求書」という。)を会社に提出した。

  本件は、@協力会技術者が労組法上の労働者に当たるか否か(争点1)、協力会技術者が労組法上の労働者に当たる場合、A組合の1月31日付団体交渉申入れ対する会社の3月16日、4月12日及び5月23日の対応は、不誠実な団体交渉及び組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点2)、B本件要求書に対する6月19日の会社の対応は、不誠実な団体交渉及び組合の運営に対する支配介入に当たるか否か(争点3)が争われた事案である。

 

3 主文 <一部救済命令>

 ⑴ 会社は、組合が会員規則を議題とする団体交渉を申し入れたときは、これに誠実に応じなければならない。

 ⑵ 文書交付

 

4 判断の要旨

 ⑴ 争点1

本件においては、協力会技術者と会社が締結する業務提携契約に、協力会技術者は、会社への支援事項として、会社から紹介された顧客との業務委託契約の締結や、顧客との業務委託契約等に基づいた保安管理業務の誠実な履行について定められていること、会社は、ESシステムと保安管理業務とを一体の電気保安サービスとして販売提供しており、会社のESシステムを導入する顧客に対し、保安管理業務のサービスの提供も提案し、業務委託契約の相手方として協力会技術者を紹介していることなどの、会社が顧客に対してESシステムと保安管理業務とを一体の電気保安サービスとして販売提供することにより、ESシステムの利便性を高め、自らの収益を拡大するために協力会技術者の保安管理業務を利用している側面があることを窺わせる事情が存することが認められる。

   本件における協力会技術者が労組法上の労働者に当たるか否かについては、上記の点も踏まえつつ、労組法の趣旨及び性格に照らし、@事業組織への組入れ、A契約内容の一方的・定型的決定、B報酬の労務対価性、C業務の依頼に応ずべき関係、D広い意味での指揮監督下での労務提供、一定の時間的場所的拘束、E顕著な事業者性の有無などの諸要素を総合的に考慮して判断すべきである。

  ア 事業組織への組入れ

    会社は、主な事業の一つとして、ESシステムと保安管理業務とを一体の電気保安サービスとして販売提供しており、このような事業に関して締結される業務提携契約及び業務委託契約は全体としてみると上記の会社の事業に必要な労働力を確保する目的を持つものといえるところ、ESシステムと併せて保安管理業務を委託している顧客のうち95パーセント以上が協力会技術者と業務委託契約を締結するなど、保安管理業務の大半は、協力会技術者が担っている。会社は、協力会技術者を、会社名を冠した協力会に所属させて管理し、研修を実施して保安管理業務に係る能力の維持向上を図っており、協力会技術者は、業務管理契約を会社の顧客とのみ専属的に締結しており、また、会社は、協力会技術者を自己の組織の一部として扱っていることなどから、協力会技術者は、実質的には、会社の保安管理業務を遂行するために不可欠な労働力として、会社の事業組織に組み入れられて業務を行っているということができる。

  イ 契約内容の一方的・定型的決定

   () 業務提携契約

    a 業務提携契約書には、会社が作成した様式が用いられており、当事者双方のいずれから異議の申出がない場合は、自動更新となっている。

      会社は、29年7月1日付けの業務提携契約書の改正に際し、協力会技術者に対し同契約書を改正することを通知文や技術セミナーで案内したりし、協力会技術者からの問い合わせに応じている旨主張するが、会社が協力会技術者の要望なりを踏まえて同契約書の内容を修正して再締結したとの事実は見当たらない。

b また、業務提携契約には、協力会技術者は協力会が別途定める会則を遵守する旨の規定があり、この会則には、服務規律、安全衛生、報酬、賠償等についての規定があるが、同会則は業務提携契約により入会が義務付けられている協力会が一方的に定めていることが認められる。

c なお、覚書によって契約内容を修正することが可能であるが、その内容は、会社と業務提携契約を締結しようとする電気管理技術者が、顧客以外の設備設置者と保安管理の業務委託契約を締結している場合で、かつ、会社と業務提携を締結するまでの間に当該契約を解除できない場合に、業務提携契約書第15条の競業制限規定を緩和するというもので、修正可能な内容は非常に限定的であるといえる。

d したがって、会社は、業務提携契約の内容を一方的・定型的に決定しているといえる。

   () 業務委託契約

     業務委託契約は、協力会技術者と顧客との間で締結するものであるが、その契約書は、定型化した様式を会社が作成していることが認められる。業務委託契約書には、設備容量に応じた月額の保安管理業務報酬や点検内容等に応じた報酬を定めた別表が付属しているが、協力会技術者は、顧客との契約の際、別表記載の報酬額を記載することになっており、そのほかに交渉を行って契約内容を決定しているといった事実は認められない。

したがって、協力会技術者と顧客との業務委託契約の内容を会社が一方 的・定型的に決定しているといえる。

  ウ 報酬の労務対価性

   () 業務提携契約の基づく報酬

     支援報酬は、作業量等に応じて支払われるものではないが、会社による顧客の紹介を協力会技術者が断ることが相当数ある中で、会社が、業務委託契約1件につき月額1,500円を支払う支援報酬は、協力会技術者に対し、業務委託契約の締結とその確実な履行を促す趣旨のものとみることができ、この点において労務提供の対価としての性格を有しているといえる。

   () 業務委託契約に基づく報酬

     月次点検手数料は、作業時間に応じて算出されるものではないが、月次点検等の保安管理業務は、その業務内容が法令で定められ、定型的な性質を有することから、業務の内容に対応する一定の業務時間が想定できる性質のものである。加えて、業務委託契約に係る営業活動や顧客管理、報酬の請求・受領その他の各種事務手続を会社が代行し、協力会技術者自身は、電気管理技術者として保安管理業務に自らの労務を供給することに専念しているという実態を考慮すると、月次点検手数料は、控除すべき諸経費等を余り含んでおらず、純粋に協力会技術者自身が供給した労務に対する報酬とみることができる。そうすると、協力会技術者の得る報酬については、協力会技術者が多くの顧客と業務委託契約を締結するなどして自らの供給する労務量を増加させれば、それにある程度比例して報酬額も増加するというように、投下した労務量と報酬額との間に大まかな比例関係を認めることができる。

     また、前記アで判断したとおり、会社は、ESシステムと保安管理業務とを一体の電気保安サービスとして販売提供しており、協力会技術者は、会社とESシステムサービス契約(以下「ES契約」という。)を締結した顧客に対する保安管理業務を担っているのであるから、保安管理業務に対して支払われる月次点検手数料は、会社の事業のために提供した労務の対価とみるのが相当である。

  エ 業務の依頼に応ずべき関係

   () 協力会技術者は、会社からの顧客の紹介に対し、今以上に顧客を増やしたくないといった本人の事情や、顧客の所在地から自身の事業拠点までの距離、設備の容量の大小、顧客の業種などを理由に紹介を断ることがあり、また、現地調査後に、点検経路の危険性、顧客設備の状況などを理由として顧客紹介を断ることがあり、そうしたケースが時には4割ないし5割に及ぶ事実が認められる。

     会社は、協力会技術者に対し、紹介する顧客との契約件数のノルマを課したことはなく、顧客紹介を断ったことを理由に、その後、顧客紹介を行わなくなったこともない。

     また、業務提携契約上、会社からの顧客の紹介を断ることは、契約解除事由となっておらず、顧客との業務委託契約締結後、その契約を解除することも可能である。

     以上のことからすれば、会社からの顧客の紹介に対し、業務提携契約に定められている顧客との業務委託契約の締結を、協力会技術者は拒否する自由があるといえる。

   () 緊急応動

     経済産業省の運用方針には、設備に事故や故障が発生した場合に、電気管理技術者等は、現状の確認や送電停止などの指示を行うとともに、事故や故障の状況に応じて臨時点検を行うなどする必要がある旨の定めがあるだけである。ESシステムが顧客設備の停電等を感知したときに、会社の依頼を受けた担当技術者が速やかに対応し、担当技術者が対応できない場合には会社が応援技術者に対応を依頼するという緊急応動の対応は、協力会の会則に定められたものであり、ESシステムによる24時間監視サービスと保安管理業務とを一体の電気保安サービスとする会社の方針を踏まえた対応とみるのが相当である。

     この緊急応動に対して、会則では、やむを得ない事由を除き緊急応動の要請を拒否することはできないと規定され、会社は、当該顧客の担当技術者が何らかの事情で緊急応動に応じられない場合、顧客近隣の協力会技術者に対して緊急応動を依頼している。そして、担当技術者が、緊急応動に応じられなかった場合、その代わりに緊急応動に応じた応援技術者に対して自らの負担で報酬を支払うこととされており、このような仕組みであるから、協力会技術者は、やむを得ぬ事情がない限り、緊急応動に応じざるを得なかったということができる。

  オ 広い意味での指揮監督下での労務提供

    協力会技術者は、法令や点検マニュアルに基づいて保安管理業務を行うが、会社から具体的な業務の指示や指導等を受けることはなく、自己の裁量によって業務を行っており、また、保安管理業務の実施日時やデータ保管業務を行う日時についても、自ら決定しており、会社が業務の日時や場所等の決定に関与している事実は認められないから、協力会技術者が具体的業務遂行の方法や日時等について受ける拘束の程度は、会社から広い意味での指揮監督下に置かれているとか、一定の時間的場所的拘束を受けていると認めるに足りるものとはいえない。

  カ 顕著な事業者性

    協力会技術者には、独自に営業活動を行って自己の才覚で利得する機会は極めて限られており、保安管理業務に必要な機械機材は、協力会技術者が費用負担して購入してするが、業務委託契約に伴う各種事務手続の代行費用は、個別有料業務に係るもの以外は負担しておらず、業務における損失の全てを協力会技術者が負担しているとはいえないことからすれば、事業者性が顕著であるとまではいえない。

  キ 結論

    以上のとおり、協力会技術者は、@会社からの顧客の紹介に対しては依頼に応ずべき関係にあったとはいえず、また、A業務遂行の方法や日時等について受ける拘束の程度は、広い意味での指揮監督下に置かれているとか、一定の時間的場所的拘束を受けていると認めるに足りるものとはいえない。しかし、協力会技術者は、B会社の事業遂行に不可欠な労働力として会社の事業組織に組み入れられており、C会社が業務提携契約の内容及び委託契約の内容を一方的・定型的に決定しているということができ、D協力会技術者が得る支援報酬及び月次点検手数料は、会社への労務の提供に対する対価としての性格を有するものということができ、E緊急応動については、業務の依頼に応ずべき関係にあったといえる一方、F顕著な事業者性は認められない。

    以上の事情を総合的に勘案すれば、本件協力会技術者は、会社との関係において、労組法上の労働者に当たると解するのが相当である。

 ⑵ 争点2及び3

  ア 競業避止義務について

    会社は、組合が1月31日付団体交渉申入れで競業避止義務の撤廃を求めたことに対し、第1回及び第2回話合いでこれを拒否する回答をしている。しかし、その際、会社は、会社の事業やその仕組みを説明し、会社と協力会技術者とが業務提携することで協力会技術者にメリットがあることを説明した上で、会社と協力会技術者は、双方とも電気保安管理業務を行っており、元来競業関係にあるところ、会社と協力会技術者が業務提携をして協力するのであるから、競業制限を行うのは当然であると述べ、応じられない理由を具体的に説明している。これに対し組合は、それ以上の追及をすることなく、6月8日付要求書を提出し、同じ要求を繰り返すのみであったものといえる。

    以上のことからすると、競業避止義務の撤廃の議題についての会社の対応は、会社が協力会技術者は労組法の労働者に当たらないとの立場をとっていたことを考慮しても、不誠実な対応に当たるとまではいえない。

  イ ES契約終了後の業務委託契約の取扱いについて

    組合が1月31日付団体交渉申入れで、ES契約終了後に協力会技術者と顧客との業務委託契約の解除を求めないことを要求したことに対し、会社は、第1回及び第2回話合いでこれを拒否する回答をしている。しかし、その際、会社は、組合の要求に応じられない理由として、ES契約と保安管理業務とを一体として顧客に提案して販売提供していること、ESシステムを外すと点検頻度が変わることから契約内容がやり直しになること、競業避止義務に抵触するおそれがあることなどと説明している。これに対し組合は、それ以上の追及をすることなく、6月8日付要求書には上記要求を明示していない。

以上のことからすると、ES契約終了後の業務委託契約の扱いの議題についての会社の対応は、会社が協力会技術者は労組法の労働者に当たらないとの立場をとっていたことを考慮しても、不誠実な対応に当たるとまではいえない。

  ウ 報酬について

    組合は、1月31日付団体交渉申入れで、緊急応動や年次点検に対する正当な報酬を支払うことを求め、第1回話合いで、会社は、いずれに対しても、ES契約と保安管理業務をセットでやっており、その値段で顧客に営業して契約していると回答し、この要求を拒否している。

第2回話合いでは、組合が、年次点検について具体的金額を示して要求したことに対し、会社は上記理由を再度述べるとともに、ES契約と保安の契約を一緒に顧客から取ってきた時点で協力会技術者にこの金額で受けるか否かを確認し、承諾を得て行っているなどと答えた。これに対し組合は、この回答に反論することなく、別の話をし始め、このことについての議論が深まることはなかった。

その後組合は、6月8日付要求書で、緊急応動に係る報酬を要求し、このことに対し、会社は、第4回話合いで、緊急応動については、ESシステムと保安の点検とは一体のサービスとして会社が金額設定しているので、応じられないと改めて回答したが、その後組合は、この議題について議論を深めることはなかったことが認められる。

こうした交渉の経緯をみると、会社の説明が必ずしも十分であるとはいえないまでも、自らの見解について一応の説明をし、これに対し組合は、この説明に対し質問やさらなる追及をしたり、自らの要求の根拠を具体的に示したりしていないのであるから、報酬の議題についての会社の対応は、会社が協力会技術者は労組法の労働者に当たらないとの立場をとっていたことを考慮しても、不誠実な団体交渉に当たるとまではいえない。

  エ 会則について

    組合は、1月31日付団体交渉申入れで、契約及び会則の変更を行う場合は、組合と十分に協議し合意の上行うことを求め、第1回話合いにおいて、組合は、契約変更を行う場合は、契約を結ぶ前に、団体交渉で話合いをするよう求めた。

会社は、協力会は会社が作った団体なので、協力会技術者の意見は聞いて、反映できるものは反映させるが、労働契約とは違うので変更について組合と話合いをする必要はないと考えると述べた。

これを受け、組合は、第2回話合いで、会則の改廃は、会長が決定することが定められているが、協力会会員の総意で決定し、会長が承認するように変えてほしいなどと述べた。

これに対し会社は、技術セミナーの場で、これまでのように会則の変更を黙認するだけでなく、1時間あるいは2時間、時間を割いていくことは考えていくと述べた。

6月8日付要求書で、組合は、「会則についても、組合と十分な協議ののち、合意に達した場合遵守する。」を挿入することを求め、第4回話合いで、組合は、業務提携契約書の中に「会則による」という文言が頻出しているところ、会則は協力会会長が勝手に変えられるものなので、会則ではなく同契約書の中で規定してほしいというのが我々の要求であると述べている。

さらに組合が会則を勝手に変えられて従うべきというのは、白紙委任しているのと同じであると述べ、業務提携契約を自動更新した後会則が変わることはあるのかと問うと、会社は、あり得ると答え、その際、協力会技術者の同意を求める作りにはなっていないと述べ、組合の要求を拒否していることが認められる。

以上のやり取りをみれば、組合は、具体的に自らの要求内容と現状の問題点を会社に示しているのに対し、会社は、技術セミナーで1時間あるいは2時間、時間を割いていくことは考えていくと回答する程度であった。業務提携契約締結後に一方的に内容を変更されるかもしれないという組合の不安やそのことが不合理であるとの組合の指摘などに対し、会社は、協力会の趣旨がそうなっている、同意を求める作りになっていない、と現状を述べるだけの発言をしたり、嫌なら契約をしなければよいと突き放すような発言をしたりしており、このような会社の対応は、組合の理解を得るべく協議を尽くしたとは、到底評価し得ない。

会社は、会則は労働契約ではないので組合と話し合う必要はないとも述べているが、会則は、会員である協力会技術者の服務規律、報酬、表彰・懲戒、研修等について定めているのであるから、組合員の労働条件に関わるものであり、義務的団体交渉事項に当たるというべきである。そして、上記のとおり、会則を議題とする協議は十分に尽くされたとはいえないのであるから、会社の対応は不誠実な団体交渉に当たるといわざるを得ない。

  オ 保安管理業務の報酬の請求について

    組合は、第3回話合いで、業務委託契約の形態からすると、協力会技術者が顧客に請求書を発行して報酬を振り込んでもらうというのが筋であるなどとして、会社が保安管理業務に関する報酬の請求を代行することをやめてほしい、各協力会技術者が顧客に請求書を発行し、直接顧客から保安管理業務に関する報酬を徴収する方法にしてほしいなどと要求した。しかし、組合が、会社のES契約に係る分もまとめて顧客に請求して徴収し、自らの取り分を差し引いた残りを会社に払うと述べ、これに対し会社は、組合のいう前提がよく分からないと述べ、未収が生じるような事態となっても協力会技術者が代金を全部請求するということなのか、会社の取り分であるES契約によるマネジメント費は回収してくれるのかと質問したが、組合がこれに応ずることはなく、会社は、「それじゃ話は前に進みません。」と述べるに至っている。

結局組合は、自らの具体的な要求内容やそれを求める理由を明らかにすることなく、その後も6月8日付要求書で要求を繰り返すのみであったのであるから、保安管理業務の報酬の請求を議題とする協議が進展しなかったとしても、その一因は組合の交渉態度にあるといわざるを得ない。

以上のことからすると、保安管理業務の報酬の議題についての会社の対応は、会社が協力会技術者は労組法の労働者に当たらないとの立場をとっていたことを考慮しても、不誠実な対応であるとはいえない。

  カ 結論

1月31日付団体交渉申入れ及び6月8日付要求書に対する会社の対応は、競業制限、ES契約終了後の業務委託契約、報酬及び保安管理業務の報酬の請求を議題とする協議は、不誠実な団体交渉に当たるとはいえないが、会則については、会社は十分に説明を尽くしたとはいえないのであるから、こうした会社の対応は不誠実な団体交渉であるといわざるを得ない。

なお、会社は、「話合い」と称しながらも実質的に協議には応じており、他の議題においては相応の対応をしているといえるから、組合を無視しているとまでは必ずしもいい難く、会則に係る協議を十分に尽くしていなかったとしても、このことが組合の運営に対する支配介入に当たるとまではいえない。

 

5 決定書交付の経過 

    申立年月日     平成30年6月19

   公益委員会議の合議 令和3年9月21

   命令書交付日(発送)令和3年1110日(8日発送)