【別紙】

 

1 当事者等の概要

 申立人組合は、中小企業に働く労働者などを中心とするいわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員数は約900名である。

 被申立人Y1は、リース事業・貸金事業などの金融事業を行う株式会社であり、本件申立時の従業員数は約100名である。Y4社長が代表取締役を務め、Y3が部長職の地位にあり(以下「Y3部長」という。)、同社長を補佐する立場にある。

 被申立人Y2(以下、Y1と併せて「会社ら」という。)は、Y1の完全子会社であり、Y1のグループ企業の債権回収を業とする株式会社である。本件申立時の従業員数は約50名であり、Y3部長が取締役を務めているが、Y4社長はY2の身分を有していない。

⑷ 申立外Z1(以下「Z1」という。)は、Y1の完全子会社である。

 

2 事件の概要

27年7月1日、X2は、Y1に営業部の部長職として入社し、同時に、Z1に出向して取締役兼コンシューマー・ファイナンス事業部長(後に取締役兼第一営業部長兼債権管理部長)に就任した。

30年6月11日、Y1及びZ1は、X2に対し、Z1への出向解除及び取締役退任並びにY1の部長職から一般職へ降格することを伝えた。

6月13日、X2は、組合に加入したが、7月18日、不安を伴う適応障害との診断を受け、休職した。

1225日、X2は、Y1に復職し、Y2に一般職として出向した。

31年1月21日、X2とY1のY3部長とは、Y1の会議室で面談を実施し、Y3部長は、X2に対し、「ユニオンを立てた時点で、もうこいつは、というふうに思われてるのよ、あなたは。あなたが上の経営者だったらどう思う。」などと述べた。

1月22日、X2とY1のY4社長及びY3部長とは、社長室で面談を実施し、Y4社長は、X2に対し、「ユニオンに頼むというのは、半分嫌がらせみたいなもんやんか。」などと述べた。

1月23日、X2とY4社長、Y3部長及びY1の内部統括部社員2名とは、社長室で面談を実施した。

本件は、X2に対する、@1月21日の面談におけるY3部長の発言、A同月22日の面談におけるY4社長の発言及びB同月23日の面談におけるY4社長の発言が、それぞれ組合の運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。

 

3 主文の要旨 <一部救済命令>

⑴ Y1は、組合員に対し、組合に加入したことを非難するなどして、組合の運営に支配介入してはならない。

⑵ 文書の交付

   要旨:31年1月21日にY1の部長が、同月22日にY1の代表取締役が、組合員に対し、組合に加入したことを非難するなどしたことは、不当労働行為であると認定されたこと。今後繰り返さないよう留意すること。

 ⑶ ⑵の履行報告

 ⑷ その余の申立ての棄却

 

4 判断の要旨

 31年1月21日のY3部長のX2に対する発言が、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か

ア Y3部長はY1の部長職でY4社長を補佐する立場にあるところ、X2に、Y4社長への謝罪と損害賠償請求訴訟の和解の必要性を説き、「ユニオンを立てた時点で、もうこいつは、というふうに思われてるのよ、あなたは。あなたが上の経営者だったらどう思う。」、「それを、例えば、感情が高ぶってね、あいつは、みたいに思われているところに、それに輪を掛けたのが、その、第三者を入れたということだと思うよ、その、しかも、第三者も悪いと思うよ、私は、性質が。企業にとって。」といった発言をしている。

これらの発言は、組合加入や組合を介した交渉がX2に悪影響を及ぼすことを示唆し、同人に対し、暗に組合からの脱退を迫るもので、これが、同人をY1の会議室に呼び出した上で行われていることをも踏まえれば、職位を離れた個人的な話であったとは認め難く、Y1による組合の弱体化を図る支配介入行為に当たるというべきである。

イ X2は、Y1に入社し、Y2に出向しているから、Y1及びY2は、いずれも同人の使用者に当たるということができるのであり、Y3部長が、Y2の取締役を兼務している事実も認められる。しかし、1月21日の面談は、Y1の会議室で行われ、その発言の対象は、X2Y1の完全子会社であるZ1との訴訟に関するものであるから、Y3部長の発言は、Y1の部長としてなされたものとみるべきであり、Y2による支配介入とはいえない。

 31年1月22日のY4社長のX2に対する発言が、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か

ア 1月22日の面談は、前日のY3部長との面談において、同部長が勧めて実現したものであり、実質的に会社らが設定した面談である。

  イ Y4社長は、X2に対し、「(組合に)いろんな相談乗ってもろうたという義理もあるんかもしれんけど。そんなものも含めてもさ。結局、何の得があった。」、「ユニオンに駆け込んで、いろいろ相談乗っていただいて」、「何の得があった。」、「ユニオンからしてみたらさ、100万か200万か分捕って、分捕ってそこから2割か3割さ、上前はねてさ、成功報酬でさ。終わりにしたいわけですよ。ユニオンからしてみたら、思うよ、重荷やと思いますよ、銭にならへんねやから。」、「ただ、毎月ね、いくらか金もろうてるわけやから、会費で、何もせんわけにいかんと。」、「個人の感想から言うけど、こりゃ金になりそうやなというときはね、こうやって出てきてね、こりゃちょっと金にならへんぞ、となったらね、もう、そっちでうまいこと話してみたら1回、と、こんな感じでしょ。」、「多分あなたはユニオンに頼んでるから、ユニオンの方がね、その話うまく進むぞと、半分嫌がらせも込めてさ」、「ユニオンに頼むというのは、半分嫌がらせみたいなもんやんか。」などと述べている。

これらの発言は、組合に加入し、組合に頼んで話を進めたX2の対応を半分嫌がらせみたいなものと非難し、同人に対し、暗に組合からの脱退を迫るもので、Y1による組合の弱体化を図る支配介入行為に当たるというべきである。

 Y4社長は、Y1の代表取締役であって、Y2の身分を有しておらず、その発言の対象は、X2Y1の完全子会社であるZ1との訴訟に関するものであるから、Y2による支配介入とはいえない。

 31年1月23日のY4社長のX2に対する発言が、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か

当日の面談の席において、Y4社長が、組合が主張するような内容の発言をしたと認定するまでの証拠はないから、支配介入に該当する行為があったとは認められない。

 

5 命令書交付の経過

⑴ 申立年月日     平成31年3月25

⑵ 公益委員会議の合議  令和2年1月21

⑶ 命令書交付日     令和2年3月4日