【別紙】

 

1 当事者の概要

⑴ 申立人組合は、個人加盟のいわゆる地域合同労働組合であり、本件申立時の組合員数は、99名である。

⑵ 被申立人会社は、国内外向け広告企画等を業とする株式会社で、本件申立時の従業員数は、7名である。

 

2 事件の概要

 平成30年7月20日、被申立人会社は、]2を解雇した。その後、]2は申立人組合に加入し、組合は、同人の解雇撤回を要求して、8月6日、同月21日及び9月3日付けで会社に団体交渉を申し入れた。

しかし、会社は、]2との雇用関係は完全に終了したと回答して、団体交渉に応じなかった。

本件は、組合が30年8月6日、同月21日及び9月3日付けで申し入れた]2の解雇に関する団体交渉に会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか否かが争われた事案である。

 

3 主 文(全部救済)

⑴ 文書の交付

要旨:東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されたこと及びこのような行為を繰り返さないよう留意すること。

⑵ 前項の履行報告

 

4 判断の要旨

   会社は、]2が本件解雇について何ら争わないまま、会社を完全に退職し、会社と同人との雇用関係が完全に終了した後になって、組合が会社に対して団体交渉を求めているのであるから、会社にはこれに応ずる義務はないと主張する。

    しかし、労働者が解雇されたとしても、解雇そのものについて争いがあるなど労使間に未解決の問題が残されている場合において、組合が組合員の労働条件に係るその未解決の問題について団体交渉を申し入れたときには、使用者は、その団体交渉に応ずべき立場にあるといえる。

これを本件についてみると、]2が解雇通告時に異議を述べたか否かについては争いがあるが、同人が私物の搬出や退職に伴う手続に応じたことは認められる。しかし、]2は、7月20日の解雇通告から17日後の8月6日には、組合を通じて解雇撤回を要求し、解雇について争う意思を明確に示しているのであるから、たとえ、同人が解雇通告時等に明確に異議を述べず、また、私物を搬出し、退職に伴う手続にも応じていたとしても、そのことから直ちに同人が解雇を認め争わない意思を表明していたということはできない。

そうすると、]2に対する解雇通告については、上記3回の団体交渉の申入れ当時労使間に依然として未解決の問題として残されていたものであるというべきであり、会社と同人との雇用関係が完全に終了しているため、団体交渉の申入れに応ずる義務はないとの会社の主張は、採用することができない。

以上の次第であるから、組合は、]2の解雇という組合員の労働条件に係る会社との間の未解決の問題について、時期に遅れることなく団体交渉を申し入れており、会社はそれに応ずべき立場にあったということができる。それにもかかわらず、会社はその申入れに応じなかったのであるから、会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

   会社は、本件申立て後の団体交渉の要求に誠実に応じたことなどから、救済の必要性等はないと主張する。確かに、本件申立て後、組合と会社とは。31年3月22日、令和元年5月23日、8月5日、9月27日及び1114日に、]2の解雇理由等について団体交渉を行っていることが認められる。

しかし、団体交渉の開催が当初の申入れから半年以上後になったこと、また、会社が本件手続において組合の3回の団体交渉申入れに応ずる義務がなかったとの主張をしていることからすると、救済の利益が全て失われたものということはできない。

 

5 命令交付の経過 

⑴ 申立年月日     平成30年9月27

⑵ 公益委員会議の合議 令和2年3月17

⑶ 命令書交付日    令和2年6月17